溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
六年前ということは、彼は三十歳で、私は大学を卒業したばかりのころ。
衝撃で、涙も出なかった。ただ信じられないという気持ちでいっぱいだった。合成写真じゃないのかと粗を探すように何枚も確かめたけれど、不自然なものは一枚もなかった。
「こちらは出産した頃の写真です。これは息子の一歳の誕生日」
頭の中で鐘を容赦なく打ち鳴らされているみたいだった。
家族団らんの写真が、彼女のハンドバッグから手品のように何枚も取り出される。まるで病魔だと思った。目にしただけで感染するそれは、じりじりと私の胸を蝕んだ。
「皆様によく言われるんですけど、うちの息子、時田にそっくりでしょう。完全にあちらの遺伝子が優性で」
もうやめて。
「……わかりました」
肩で呼吸している私を憐れむように見て、彼女は静かに言った。
「慰謝料は請求しません。あなたにも悪気があったわけではなさそうなので……。ただ、時田にはもう二度と会わないでください」
広げられた写真の横に、鍵が置かれた。
「こちらはお返しします」
章介さんのキーケースに、ほかの鍵と仲良くぶら下がっていたはずの私の部屋の合鍵。ようやく頭の中ですべての回路がつながったように、私はその場に崩れ落ちた。