溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


高級住宅地のど真ん中に建つ豪邸。

私が東京の隅っこに借りている1LDKのマンションですら地元のマンションと比べて倍近い家賃がかかっているのに、東京の一等地でこの大きさの家って、一般的なサラリーマン家庭の人が住めるはずがない。
 
玄関をくぐってすぐ、大理石の三和土の広さにめまいを覚える。

もしかして、瀬戸くんって良いトコロの御子息なの? 
 
使いこまれて深い味わいが出たフローリングは、ぴかぴかに磨きぬかれている。廊下の奥の扉が開かれると、ソファが置かれた応接間の向こうにガラスに閉ざされた和風庭園が見えた。
 
絶句している私を見て、瀬戸くんがさらりと言う。

「中庭はオヤジの趣味でさ。休みの日に黙々と白玉砂利を敷き詰めてたよ」

「え……、お父さんがつくったの?」
 
天井まで届きそうな巨大な窓の向こうには、砂利と苔と石でつくられた、わびさびの世界が広がっている。

「ああ。鹿威しも手作り」
 
頭のなかにドラマのワンシーンが思い浮かんだ。高級料亭で政府の重鎮が向き合って難しい顔をしている。ちょろちょろと聞こえていた水音に、カコーンと甲高い音が混じる。
 
一般家庭ではめったにお目にかかれない竹筒の装置を見て、私は立ちつくした。

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