溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「瀬戸くんのお父さんって、何をしてる方なの?」
妄想したばかりの政府の重鎮が脳内をちらついた。ロマンスグレーの頭髪に鋭い双眸、そして威厳のある佇まい――。
瀬戸くんは首をすくめた。
「隣の駅で病院やってる」
「病院……」
医者なのか。さぞかし大きな総合病院を経営しているのだろう、と納得していると、彼が付け足す。
「といっても、小さい個人病院だけど」
「え……」
「あら生吹。帰ってたの」
振り返ると、ドアの脇にショートカットの中年女性が立っていた。
年齢はうちの母親と同じくらいに見えるけれど、高級ブティックでしか見ないような抽象画めいた模様のワンピースを着ている。瀬戸生吹の母親だろうか。
会釈をする私を見るや、彼女は細くつり上がった眉をぴくりと動かした。
「そちらは?」
「彼女は会社の同僚で」
「会社の? あらあら、お客様にお茶もお出ししないで。生吹、そちらに座っていただいて」
パタパタとスリッパを鳴らしてキッチンに消えていく女性を見送っていると、瀬戸くんが耳元でつぶやいた。
「母だよ」