溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
ずしりと肩が重くなった気がした。
やっぱりというかなんというか、とても派手で、でも上品さも損なわず、かつ厳格そうなお母様だと思った。私を見てにこりともしなかった。
自分を顧みて肩が落ちる。もう少し、ちゃんとした格好をするべきだったかもと思った。
髪をひとつにまとめ、モノトーンのスーツに身を包んだ今の姿は、会社に行くときと変わらない。
そもそも私、なんでここに連れてこられたのだろう。
改めて考えながらスリーシーターのソファに腰を下ろすと、すぐ隣に瀬戸くんが座った。ガラスのテーブルに紅茶が運ばれ、瀬戸くんのお母さんが眉をつり上げたまま笑う。
「申し訳ありませんわね、こんな狭苦しい家にわざわざ来て頂いて」
「と、とんでもないです」
恐縮し切っている私の横で瀬戸くんが口を開く。
「彼女は西尾光希さん。職場でアシスタントの仕事をしてて、ずいぶん助けられてる」
「それはそれは、息子がいつもお世話になっております。生吹の母の杏子です」
「い、いえ、私のほうこそ」
「それで母さん、俺は光希と」
「ああそうだ生吹」
瀬戸くんの話を不自然な流れで遮り、彼女は眉墨でくっきりと描かれた眉をひそめた。