蛇の囁き
翌日、母からまだ日も昇らないうちから起こされ、眠い目を擦りながら牛の水やりを手伝った。動物のライフスタイルに合わせた田舎の朝は早い。
朝食を摂った後、母は病院に向かった祖母に代わって買い物に行き、父は祖父と共に畑に向かった。
一人残された私は、机に向かって勉強をしていた。窓から吹き込む夏風にじわりと汗が滲む。この家にエアコンなど無い。扇風機はただの気休めだ。
一つため息をついてペンを置く。
そして、あの男の人のことを考えた。瞳が綺麗な人だった。あの透き通った目が忘れられない。
ああ、これではいけない。
首を振って、またペンを取った。
手を動かすが、どうしても目の奥にあの赤色の瞳がちらつく。どうも思考は別のところに向かっていた。
仕方ない、と私はペンをまた置いた。
集中がすっかり途切れてしまったので、思い切って例の神社に向かうことにした。