蛇の囁き
「カガチさんだけの場所なのに……私に教えてもいいんですか?」
私がそう尋ねると、彼は目を瞬かせてきょとんとした顔をした。
何故か私はその表情をかわいいと思った。
彼は少し考えて、そうか、そうだね、と一人小さく呟いた。しばらくして、君には教えたいと思ったんだ、と彼は微笑んだ。
私はじわじわと顔が熱くなって彼から顔を背けた。
手が離れた。そう思ったとき藪がひらけた。
連れて行かれたところは山の中腹辺りだろうか、村の端から端まで、更には向こうの空に霞む連山を一望できる場所だった。
眼下には緑が生い、小川が光っている。秋は紅葉が絶景に違いない。そこには美しい原風景が広がっていた。
「綺麗だろう、ここは人も来ないお気に入りの場所なんだ」
彼は目を細めて近くにあった大きな白岩に腰掛けた。私も彼に導かれてその隣に座って景色を眺める。
「気に入ってもらえたかな」
「はい、とても」
圧倒されるほどの美しい自然の風景をここから独り占めできるとは、何にも勝る贅沢だ。
私はすっかり心奪われてしまった。