蛇の囁き
時の流れは遅々としたものだったが、季節は確実に過ぎていった。
大学入試も終わり、私は何とか地元の志望大学に滑り込むことができた。
春から大学生になった私は、化粧を覚えて、それなりにおしゃれな格好をして、少しだけ髪を明るくした。そして、いつも例のネックレスを首から提げていた。
声を掛けられることが多くなったが、唯一見せたい人はここにはいなかった。
もし彼がこれを見たら、かわいいな、と言ってくれるだろうか。それとも大人びたな、と言ってくれるだろうか。
そんなことを、鏡に映る自分を見つめながら一人ぼんやりと考えた。