蛇の囁き



 加賀智さんと私は岩に座って語らった。いつも困り顔で質問をはぐらかしていた加賀智さんは、今日は私が尋ねること全てに一つ一つ答えてくれた。


「加賀智さんは私の祖父と知り合いなんですか?」

「ううん、知り合いじゃない。俺が一方的に知っているというだけだよ。俺はここから村人たちの生活を見守ってきたからからね、タケが生まれた時から見てきた」


 祖父が生まれたときから──。

 私は驚いて、本当は何歳なんですか、と尋ねた。

 一年ぶりに会っても、私は成長したのにも関わらず、彼だけまるで時が止まったように全てが寸分違わず一年前のままだった。人間と同じように歳を重ねていないのは明らかだった。

 彼はあっさり答えた。


「俺はもう千年以上は生きているんだ」


 私は呆然として、千年、と呟いた。



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