蛇の囁き
今日という一日は、一年という時間を埋めるのにはあまりにも短すぎた。
日が傾き西日が差してきたころ、私たちは二人で山を下りていった。
また来年なのか──と思うと息苦しくなり、階段を下りる動きも緩慢になる。
会うたびに、より苦しくなる。そんな一年をずっと積み重ねていく。
いつか、そんな毎日に耐えきれなくなって、私はここに来なくなるかもしれない。
違うことで頭をいっぱいにして、忙しい毎日を送って考えないようにして、彼を思い出さないようにするかもしれない。
夏芽。
彼は振り返って、考えに沈む私の名を呼んだ。
「……もし、人の世を捨て、家族を捨て、人間としての自分を捨ててまで俺と永遠に生きる覚悟があるというのなら──明日、またこの山においで」
私は彼の言葉を何度も反復した後、瞠目した。