蛇の囁き
二日後、私は両親に連れられて村の山にあるとある神社に来ていた。
「ここは意外と有名なんだよ。たまに岩の間から白蛇さんが現れるって評判でね。巳年にはたくさんの人がお参りに来るんだよ」
「その時だけはこの村も渋滞になるんだよね?」と私が返すと、父は快活に笑った。
参拝客は疎らだった。全くいないわけではないが、時折すれ違う人が一人二人いるくらいで、殆どいない。
ここは山の上に境内がある。そのに行くためには山の斜面に作られた、長くて急な階段を登らなければならない。
「白蛇さんを見られたら幸せになれるって話だ。俺たちは見たことないが、爺ちゃんは見たことあるって言ってたな」
「ナツも見られるといいわね。そしたら合格間違いなしよ」
私は盛り上がる両親を置いて、階段を駆け上がった。
階段の脇にある店は、客はいないものの営業していた。りんご飴やたこ焼き、焼きそば、ラムネに甘酒。綿あめや子供が喜びそうな玩具もある。
盆で村に帰省してきて、私のように合格祈願などをしにきた人のために店を開けているのだろう。店員たちはうちわであおぎながらタオルを首にかけ、薄いTシャツ姿で甲子園を観ている。
「おーいナツ! 速く登ったら疲れるぞー」
「お父さんたちはゆっくり来て!」
私は石灯籠を横目に急な階段を駆け上がる。
日頃勉強ばかりで鬱屈としていたのでこうして体を動かすのが清々しく感じられる。