お月見泥棒
「一緒に行ってきたら?」

 女人が言うと、女児は立ち上がって、ぽん、と縁側から降りた。
 そのまま、すたすたと歩いて行く。

「……」

 三人は、また顔を見合わせ、次いで女児を見た。

「ど、どうする」

「止めておこうよ」

「でも、行っちゃいけないとは言われてないよ」

 伸太が言い、ぱっと女児の後を追う。
 すぐに喜助も伸太を追った。

「い、行くの?」

 融が焦って言うと、伸太が少し馬鹿にしたように振り向いた。

「何だよ。あんな小さい子でも行くんだぜ。大丈夫だって」

「そうだよ。祠には、何度も行ってるじゃん」

 伸太と喜助に言われ、融もしぶしぶ後を追った。
 その後ろ姿を、女人の視線が追う。

 さぁっと、また風が吹いた。
 鉄臭い臭いが辺りに漂う。

「……歳を取ったら、肉は固くなるね……」

 ふふふふ、と笑う女人は、ちらりと背後の屋敷に向かって呟いた。
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