闇に咲く華
でも、昨日あんな風に言っていたのだから、もしかして待っててくれるかもなんて思った私の考えは甘かったらしく。
いやいや、甘いってなに?
別に、どうでもいいんじゃないの。
家が隣の隣で、教室でも席が隣ってだけで、白玖となにかあるわけでもないんだし。
そもそも、遅れた私を白玖が待たなければいけない理由なんてどこにもない。
昨日言ってたのだって、嫌でも一緒になるのが前提にあるから、あんなことを言っただけのことで。
そんなことを考えながら、エレベーターで一階へと降りると、ロビーの来客用ソファに座る男が目に入った。
腕を胸の辺りで組み、俯いて動かない男はどうやら座ったまま寝ているらしい。
私が近づいても、まったく動かない。
「白玖」
声を掛けると、ピクリと肩が揺れた。
ゆっくりと頭を上げ、眠そうに目を開けた白玖が、すぐそばに立つ私を見上げる。
「はよ」
寝起きの気だるげな雰囲気をそのままに、小さな笑みを作り静かに声を出す。
そんな仕草や表情は、昨日と同じでどこか優しく見えた。