闇に咲く華


転入先の学校で新学期を迎えて、早5日。


マジメな生徒たちの中での生活は、思っていた通り静かで助かっていた。


授業中以外は、耳にイヤフォンを突っ込み、音楽を聴きながら雑誌を見ている私は、話しかけられたくないオーラを嫌ってほど出しているからか、誰も話しかけてこない。


前の学校では、休み時間のたびに集まって来ていた、たくさんの友達。


だけどそれも、もう過去の話。


静かに、目立たず、おとなしく。


これが意外と簡単だったことに、ここ最近私は気づいていた。


もともと派手なタイプでもなく、性格も特別明るいわけでもない。


てことは、普通にしていればいいだけ。


そうか、これが本来の私なのかも。


前は自分がどんな人間なのか、深く考えることもなかった。


というより、今考えると、ただ流されるままに過ごしていただけで、本来の自分などどこにもいなかったのかもしれない。


「姫乃ちゃーん、おっはよ!」


そう言って唯一声をかけてくる満島大牙も、チャラいだけで返事が欲しいというわけでもないみたいだし。


難点を上げるとすれば、隣の特等席がなぜか5日経った今も空席のままだということ。

< 8 / 67 >

この作品をシェア

pagetop