LALALA
信号で止まって、前屈みになった芝崎さんは、ハンドルに両腕を乗せた。


「自分の作ったピアスとか売れちゃうの、ちょっと淋しくない?」
「えっ?」


こちらを窺い込む眼差しは、穏やかで。


「大切なものが他人の手に渡るのって、淋しくない?」


反対の歩行者信号が点滅したので、芝崎さんは前を見て、ハンドルをしっかり握った。


「私、店頭に立ってみて改めて思ったんだけど、」
「うん」
「やっぱり、部屋にこもって仕事するのも、ずうっと一日中立ちっぱなしで初対面の人に接するのも、どっちも疲れた」
「まあ責任とか、得手不得手とかもあるだろうけど、そうだね。楽な仕事なんてそうそうないよね」
「どっちも大変。でも、大変な分だけ、やりがいがありました」


掃除から始まって、電話対応して、ラッピングの備品を発注したり、そういう裏方の作業もしながら、どんな人が買ってくれるのかな、って。
わくわくドキドキしながら過ごす時間は、あっという間だった。


「売れてくの、嬉かった。報われたっていうか、共有できた、って実感できて」


再び車は走り出し、休日の通行量の多い街中を抜け、高速のインターに差し掛かった。
周りは緑に囲まれている。


「頑張ったことが報われたり、自分がいいと思ったものを、同じようにいいって言ってもらえるのは、嬉しいよね」


私は流れる窓の外の風景を見た。
トンネルに入る。万華鏡の中を走り抜けているみたい。
耳の奥が、きん、とした。


「私、博史に、」
「ん?」


声が小さかったためか、芝崎さんは耳をこちらに傾ける。
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