LALALA
夏子は本当に行動力があって、尊敬している。
先月の初め、私と夏子、それから今度の合コンを企画しているというモモの大学同期三人で、海外旅行に行った。
旅の間、宿やレストラン、観光するスポットなどすべて夏子が手際よく組んでくれて、語学も堪能なもんで本当にスムーズに楽しく過ごせたし、頼りになって格好いいなぁと思った。
それを彼女に伝えたら、雑貨店に置く商品の買付のために様々な国を行き来してるから、自然とこうなったのよ、と言った。
けれどもそれは謙遜であって、夏子が努力してきたことを、私は知っている。
私たちは短大の家政科で一緒だった。
小さい頃から手先が割りと器用で、裁縫や編み物か好きだった私が一番ハマったのは、アクセサリー作りだった。
夏子も最初は作る方が好きで、ネットショップは始めたとき一緒にやってたんだけど、次第に売る側に興味を持ち、卒業後二年で起業した。
駅近くの一等地に構えた雑貨店は、週末になると多くの女性客で賑わう盛況振り。
そんなこの店に、アクセサリーを置かせてもらって丸二年。
私は小さい頃から家にいて、こそこそと夜なべしながら独学で物を作るのが好きだったし、これを生業にできたのは、とてもラッキーだと思ってる。
『いいよな、季里は。ずっと家で好きな時間にアイスとか食えるだろ?』
寝食を忘れてやってるんだけど。
大学のとき、サークルのOB会で知り合った二つ年上の博史には、そう見えるみたいだった。
『俺は幾ら暑くても、営業先で水一滴飲めないときだってあるんだぜ』
営業で足が棒になるくらい疲れて帰ってくる。家事の一切を私が担って、サポートしてあげたいと思ってる。
思ってるんだけど…。
「あ、れ……?」
夏子の店を出て、借りた折り畳みの傘を開こうとした私は目を疑った。
突然の雨に、通行人はみな一様に足早に、走り去って行くのだが、二つの黒い影が駅の前で立ち止まっている。