LALALA
黒いスーツを着た男女。
斜線がかった雨の世界で、私は目を凝らす。

ひとつの傘を男の方が開いた。
女の方は濡れないように、男の肩に寄り添った。相合い傘に、照れたように顔を見合わせて笑い合う。

私たちも付き合いたての頃は、雨が降ると駅まで迎えに来てくれて、ああやってひとつの傘をシェアして、腕を組んで歩いたっけ。
懐かしい。もう、戻れないのかな。

折り畳みの傘の柄の部分を、私は握り潰すほどに強く掴む。

駅の前にいる男女が開いたその傘は、目が冴えるような真っ白の花柄模様で。
鈍色の空と、私の薄曇り状態の心を非常に明るく、明確にした。


『さっきまであんなに晴れてたのにねえ』


さっきの夏子の言い方が、＿＿あんなに仲良かったのにねえ＿＿と、台詞を一部変更して、私の頭の中でリピートされた。



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