身代わり・・だけ・・

…育児放棄


びっくりするぐらい
栞奈の荷物はなかった。

本当に、バカな息子夫婦に
涙が止まらなかった。

生まれてから、ずっといる
家なのに
段ボールに二箱もないんだ。
そのほとんどは、裁縫に使う物。

頭に来たから
幹久に、きちんと
子育てしてこなかったんだから
かなりの金額を栞奈に
渡すようにさせた。

幹久は、
「自分が会いたい」
と、言ったのに
栞奈から
「話したこともないし
話すこともないから」
と、言われたことは、
かなりショックだったようだ。

その上
持ち物が、段ボール2つしかなくて
ほとんどは、私が与えた
裁縫の道具だったと話した。

話ながら、怒りがピークになり
幹久を叩いた。

「育児放棄と見なされても
おかしくない。
杏奈には、充分しただろうし
由布子さんが、杏奈の分は
蓄えてる筈だから
あんたのは
できる限り、栞奈に払いなさい。」
と、怒鳴り付けた。

幹久は、かなり落ち込んでいたが
自分の資産をかなり栞奈に渡した。

そして、明日
出国という日に
私は、栞奈を美容室に
連れていき
前髪を切り
髪を軽くしてもらった。

美容室の店員も
回りのスタッフも
あまりの違いに驚き
栞奈の美しさに
びっくりしていた。

「栞奈、今からは
顔をあげて、真っ直ぐ前を向いて
生きなさい。」
と、私が、言うと

栞奈は、うん、うん
と、頷いた。

翌日、空港には
綾乃も来てくれて
「ほぉ、栞奈、別人だね。
綺麗だよ、本当に綺麗だ。
今からは、自分のためだけに生きな。」
と、言って抱き締めた。

栞奈も
「ありがとうございます、綾乃さん。
本当に、ありがとうございます。」
と、言って抱き締め返した。
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