身代わり・・だけ・・

…生きて来た時間を返せ


[ 日本語で話しています。 ]
 
そして、ラルフは
「何年も経っているのに
栞奈は、あなた方と
会うだけでこうなります。

栞奈の24年間が、どんなだったか
日本を離れたとき
どんなに大変だったか
この状態で理解も出来ると思いますが。

栞奈は、あなた方に会いたくて
帰国したわけではありません。

全て美都さんのためです。

美都さんを自分のせいで
日本からも家族からも引き離し
自分の孫でもある、あなたの
結婚式もお祝いしたいはずだから
と、言ってました。

栞奈は、顔だけでなく
心も本当に優しくて綺麗な娘です。」
と、言うと
「バカ栞奈、本当に無理して。
私は、私の育て方が、
悪くてこうなった息子に対して
申し訳ないと思っているんだよ。
もう息子夫婦になんかに
任せておけないと言うのも
あったけど私が栞奈と
居たいから一緒にいるのに。」
と、美都さん。

「あんたら、栞奈の作品見たことも
ないだろう?
自己流だけど、本で勉強して
作ったものを美都に見せて
もらったとき、
私は、鳥肌がたったよ。
中学生だよ!!
あれは、中学生が作る作品じゃないよ。
素晴らしかった!

それから、また和洋裁を勉強して、
それは、それは素晴らしい
作品なんだよ。
海外の王族や貴族からも
予約が殺到してるほど。

まあ、あんたらが放置して
くれたから、栞奈は一人で
生きて来たんだがな。」
と、綾乃は嫌みを加えて言った。

幹久も由布子も杏奈も驚きと、
何も知らない自分達が
情けなかったようだ。

それからラルフは、臣を見て
「綾都は、貴方の子です。
だが、父親は私です。
私しかありえない。
栞奈は、妊娠を知った時
大変だったんだ。

生も死も選べずに
不安定になり食べれず眠れず
入退院を繰り返し
綾都が、生まれてからも
愛されて育った事がないから
どうやって······
子育てをしたら良いのか

どうやって······
愛したら良いのか

わからずに苦しみ

マムや美都さん、スタッフに
一つ一つ教えてもらいながら
綾都を育てたのです。

いいですか、
栞奈は、玩具や身代わりじゃないんだ!!

一人の寂しがりやで
照れ屋で優しくて
綺麗な女の子なんだよ!

あんた達は、そんな人格を否定して
良いように利用して、栞奈を壊したんだ。
いくら親でも、妹でも
友人でも、許される事じゃない。

栞奈の生きて来た時間を返せ!!」
と、怒鳴った。


日頃は、温厚で優しい、
ラルフなのに
押さえられない物が
あったのだろう。
と、美都と綾乃は思っていた。
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