身代わり・・だけ・・
大好きなドイツと大好き家族

…前園家と臣


幹久と由布子は、
もう二度と我が子と
会うことはないのだと、
改めて思い知ることになった。

可愛い孫である綾都にも
おじいちゃん・おばあちゃんと
呼ばれる事も・・ない。

ただ、誰も気づかずに
あの子が、壊れてしまわなくて
良かったと、思っている。
今は、ただ母である美都に感謝している。

あの日から何ヵ月か
経った時に
栞奈から手紙が届いた。

『親子に戻ることはないけど、
二人の健康を
いつまでも祈っています。
そして、私を産んでくれて
ありがとうございます。』
と、書いてあった。

お礼を言ってもらえるような
親では決してない。

自分達の好き勝手をし。
自分の子供なのに
可愛がる事も
ましてや育てる事もせず。

幹久と由布子は、
遠くに住む娘が、
この先ずっと
幸せでありますようにと
願わずにはいられなかった。

杏奈は、自分の身勝手さや
我が儘、意地悪な思いを
旦那であるティートに全て話した。

ティートは、
「姉である栞奈に詫びながら
生きて行こう」
と、言ってくれた。

そして、姉の分も両親を大切に
していこうと杏奈は思った。



臣は、
杏奈の事
栞奈の事
綾都の事で
頭がいっぱいだった。

俺は、一体何を見ていたんだ。
杏奈にもて遊ばれて
その間も、栞奈はずっと寄り添って
くれていたのに‥‥‥

なぜ、栞奈の気持ちに
気づかなかったのだろう。
なぜ、
栞奈を大事にしなかったのだろう。
なぜ、
自分の気持ちに気づいた時に
早く自分の気持ちを栞奈に
伝えなかったのだろう。

なぜ‥‥なぜ‥‥なぜ。


栞奈は、辛い思いしながら
不安になりながら、
あの子を産んでくれたんだ。


医者でありながら
なんてことを・・・と、

一人、涙が止まらなかった。
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