身代わり・・だけ・・

…ずっと、一人


私は、そのぬいぐるみを見て
びっくりした。

「これは、栞奈が作ったのかい?」
と、訊ねると
「うん。」
と、言うから
「栞奈、上手だね。
これ、私におくれ。」
と、言うと
凄く嬉しそうにして
コクンと頷いた。

「ありがとう。
大切にするからね。
今からも、作ったら
美都さんに知らせて。」
と、言って連絡先を教えた。

それからは、一人でいる栞奈の
元によく行った。

栞奈は、小さいものから大きな物まで
色んな種類のぬいぐるみを制作していた。

栞奈の作品は、細かい部分も綺麗に
縫い上げていて
ぬいぐるみの出来は完璧だった。

「誰かに習ったの?」
と、訊ねたら
「本をみただけ。」
と、言っていた。

私は、栞奈に
「材料は、どうしてるの?」
と、訊ねると
「今までもらった、
お年玉やおこづかいを
貯めていたから、それで買ったの」
と、言うから
「これで、買いなさい。」
と、お金を渡して
「お金のことも、困ったことも
何でも、今からは、
美都さんに言うんだよ。」
と、話した。

私は、栞奈の作品を
友人達に見せた。

すると、仲の良い
綾乃が、
「これ、すごいね。
   私の店に置いたら?」
と、言ってくれた。

綾乃は、日本とドイツに
雑貨のお店をもっている。

それも、かなり人気のお店だ。

綾乃の所なら
間違いないと思い
お願いした。

私は、今後の栞奈の事を考えて
売り先を確保した。

日本もドイツも
『Engelchen・小さな天使』
の名前で売りに出した。

栞奈のぬいぐるみは、
日本でも、ドイツでも人気で
予約が入るようになった。

栞奈は、経営も勉強し
和洋裁も学んだ。

絵本も時々書いて
綾乃の店に置いていた。

綾乃にも栞奈を会わせた。

綾乃は、栞奈の作るもの全てを
絶賛してくれて
栞奈も喜んでいた。

「美都さんのおかげです。
本当にありがとう。
私を理解してくれるのは
美都さんだけ。」
と、言うと
「栞奈、私もだよ。」
と、綾乃が言うと
栞奈は涙を流して喜んでいた。

今まで、ずっと一人だったから
嬉しいんだろうと美都は、
思っていた。
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