健診診断と恋と嘘

あれ、凌ちゃんに頼まれてたんだ。全然違和感なく答えてたけど……なかなか高倉さんも上手だな。


「どうしても朔夜の誕生日にプロポーズしたくて。
朔夜が生まれてきた特別な日だから。
きっと今までは、悲しい気持ちで迎えてたんだろうから……今度からは幸せな気持ちで迎えられるようにしたかったんだ」


確かにそうだった。私の誕生日はお母さんの命日でもあるから、お祝いって気分じゃなかったな。


お父さんがケーキを用意してはくれてたけど、こんな風に幸せで嬉しい気持ちで誕生日を迎えるの初めてだ。


「凌ちゃん、私……生まれてきて良かった。凌ちゃんと出会えて本当に良かった。大好きだよ、凌ちゃん」


「朔夜……」


凌ちゃんが愛しそうに私の名前を呼んでくれるから、自分の名前も好きになれた。自分のことも、好きになれた。


凌ちゃんの綺麗な顔が近付いてきて、私は目を瞑ってキスを受け止める。


柔らかなその感触に心が震えて、また涙が出てくる。


それに気付いて笑いながら目元にキスしてくれた凌ちゃんに微笑んで、その胸に頬を擦り寄せる。


「愛してるよ、朔夜」


私の弱い低い声で耳元でそう囁かれて、びくっと震える私を見て笑っている凌ちゃんの腕の中で、私は人生最大の幸せを感じていた。


< 228 / 314 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop