それはとっくに恋だった
「千尋、少し黙ってなさい。」



お父さんの静かな声が部屋に響く。


お兄さんは、しぶしぶといった様子でまたテーブルの椅子に座った。



「申し訳ない、うちの息子が。」


「いえ、お兄さんのお怒りも当然です。」


「お前のお兄さんになった覚えはねぇ!」



「「千尋」」


お父さんとお母さんに同時にたしなめられて、お兄さんは舌打ちをしつつも口をつぐんだ。



「重ね重ね、申し訳ないね。

 でもね、私が千尋とまったく違う思いかととわれるとそれは違う。」



お父さんがじっと俺を見ながら言った。



「はい。」



「真尋はうちの大事な娘だ。

 もういい大人だが、それでもやはり守って欲しい節度というものがある。

 今聞いたことには正直、少し失望した。」



隣で、真尋の息を飲む声がした。
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