それはとっくに恋だった
「古臭いと言われるかも知れないが、やはりこんな形で結婚の報告は聞きたくなかった。」


お父さんの言葉に段々と真尋の顔が下がっていく。スカートをギュッと握っているのが見えた。


「順番を間違えたことは誠に申し訳ないと思っています。

 ですが・・・」



俺は手にグッと力を入れた。


「さっきの失望と言う言葉は取り消していただけませんか?」


「っ!」


とっさに出た言葉だった。俺の言葉に真尋がバッと顔を上げる。


お父さんは表情一つ変えずに俺を見ている。

俺はお父さんから視線を外さないまま続けた。



「お願いします!!俺のことは何と言っても構わないんです。

 元はと言えば俺が、悪いんですから。


 真尋さんのことがずっと好きでした。やっと付き合えるようになって、浮かれてたんです。

 もう離すつもりは全くなくて。妊娠して、不安そうな真尋さんを見て初めて、順番間違ったなって気付きました。

 真尋さんは、家族が・・・皆さんのことが大好きなんです。

 だから・・・・今回のことも皆さんにどう思われるのかが不安で仕方なかったと思うんです。」



本当はこんなこと言う予定じゃなかった。


何を言われても反論せず、受け入れるつもりでいた。


でも、きっと真尋はここで言われた言葉を忘れない。


それが家族との溝になるかもしれない。



それのせいでそんなふうにはさせたくない。
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