白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 最近は、それもありだなと感じている。

 朝食を食べ終わり、食器を洗って水切り籠へ置く。

 時間はもう7時40分になる。歯を磨いてから急いでジーンズを履き、薄い色の入った半袖解禁シャツを着て持ち物のを鞄に準備をする。

 7時55分。窓を開け、テーブルに置いてある煙草を一本銜え壁にもたれながら火を付ける。煙草はこの部屋でしか僕はあまり吸わない。むろん大学ではほとんど吸うことはない。

 吸い終わった吸殻を灰皿にいれる。灰皿にはコヒーの出汁ガラをいつも敷いている。湿った出汁ガラが煙草の火を消火してくれる。そして、あまり感じていないが消臭効果もあるらしい。

 窓を閉めカギを掛ける、時間はもう8時だ。

 僕は鞄を持ち部屋の外からドアのカギを掛ける。

 アパートの駐輪場に止めてある自分の自転車のチェーンロックを外し、駅まで10分間ほどかけて向かう。

 その途中昨日の彼女、 今村沙織と出会った公園の前を通り過ぎる。

 ふと、彼女がこの公園にいたのは、彼女の家がこの近くにあるからではないかと思った。

 学部は違ったが、偶然にも通う大学も同じ。もしかしたら、今まで彼女は接点が無かっただけで、実はもっと身近に居たのかもしれない。

 それが人との出会いと言うのなら、運命って物凄く悪戯なもんだな。そんな事を頭に過りながら駅に向かった。

 8時20分の電車で、5つ先の駅にある大学に向かう。

 この街には大きな大学病院がある。その為朝、この駅を利用する人は多い。だが、ホームに待つ客はこの駅に降り立つ乗客からすれば少ない方だ。


 もしかしたら、彼女も同じ電車に乗るのではないかと、ホームを見廻した。でも、ホームで電車を待つ人の中に彼女の姿は無かった。
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