白くなったキャンバスに再び思い出が描かれるように
 僕の驚きの表情から「なんだぁ恋人の誕生日知らなかったのか」と声が飛び。「罰ゲーム、罰ゲーム」とみんなから声が出た。

 罰ゲームって、そんなぁと思っていたら

 「二人とも制服姿でキスだぁ」と叫ばれた。

もうみんなが連呼し始めた「キッス、キッス……」と押し流される様に沙織と僕は制服に着替え「それでは準備いいですかぁ。ハイ」と言って僕らはお互い制服姿でキスをした。「カシャ」恵梨佳さんがその瞬間を写真に撮った。

 そして僕らは、みんなから祝福された。

 短い間だったけど、同じところで頑張ったみんなに祝福された。


 次の日、恵梨佳さんと支配人は自分の店の状態を確認する為朝にここを立った。その時恵梨佳さんが

 「亜咲君、今日は沙織さんをビーチにお誘いなさいな」と

 沙織も正直ビーチで遊びたいのは知っていた。

 「解ってますよ」と、恵梨佳さんは「あっそ」と呆れた様にして、それじゃと車を飛ばした。

 白く太陽に熱せられた砂。青い空にくっきりと白さが際立つ雲。そしてどこまでも続く海。波打ち際に幾度となく繰り返す小さな波、少し大きな波。今まで目の前でお預けされていた分楽しみたかった。

 「お待たせ」振り向くと水着姿の沙織とナッキ。色違いお揃いだった。

 「もしかして、あの時の水着」沙織に訊くと恥ずかしそうに頷いた。

 ナッキが「そっかぁ。あの時かぁ、じゃぁ私に感謝だな。急用でいけなくなった私に」

 その通りと、僕はあの時ナッキが急用で沙織とこの水着を受け取りに行けなくなったから、今沙織とこうしていられるんだと思った。 

 「綺麗だよ」と言った自分がとても恥ずかしかった。

 「キザだなぁ」と言われたが、そのビキニにも見える水着を着た沙織がとても眩しく見えたから。

 真っ赤になるのを隠そうと海に飛び込んだ。沙織もナッキもその後に続いて飛び込んできた。久しぶりに感じる夏海の解放感が僕を新たな世界へと導いてくれるような気がした。


 パラソルの下で並んでいる宮村と愛奈ちゃんは

 「愛奈、あいつらのとこ行かなくていいのかよ」

 「うん」

 「そっか」

 「だって、た、たか……孝之……と一緒がいいもぉん」 

     
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