フォーチュン
ユーリス王子は、先ほども「アン」と言われた。
そしてアナスタシアと対面された今、王子は「違い」を感じていらっしゃる。

観念したヴィヴィアーヌは、深呼吸をひとつすると、威厳を持った声で言った。

「アンジェリークは私どもの末の娘、アナスタシアの妹に当たる皇女でございます」
「・・・何、だと?」

宴に招待されていた皇女はアナスタシア。これは間違いない。
そして夏至祭たけなわの街で出会ったレディは、恐らくアンジェリーク皇女。
どういうことだ?
アンジェリークはアナスタシアの付き添いで来ていたのか?
・・・いや、あのホテルに宿泊していたのは、アナスタシアとオリエという侍女だけだったという報告を受けている。
その侍女は、アナスタシアの母親ほどの年齢の女性だった・・・くそっ、こんなことなら出入国者のリストまで調べさせればよかった・・・。

頭の中で思考をグルグル廻らせていたユーリスは、「申し訳ございませんっ!」というアナスタシアの声で我に返った。
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