フォーチュン
しかし、写真というのはほんの数ヶ月前に出回り始めたもので、その機械はもちろん、現像の技術やお金も結構かかることから、一般庶民にはまだ手の届かない高価な品である。
王家の者とはいえ、必要以上に贅沢な生活を送ることを良しとはしないヴィヴィアーヌたちも、滅多に写真を撮っていないのだ。
だが皮肉にも、その写真がこのような形で役に立つとは、一体誰が思っただろう。

「申し訳ございません。今手元にあるのはこれ1枚だけです」
「十分だ」

ユーリスは、写真を真っ白なハンカチで大事に包むと、黒い上着のポケットにそっと入れた。

「アンは必ず見つけ出すが、そちらも捜索を続けてほしい」
「もちろんでございます」
「では。慌しい滞在となってしまってすまないな」
「今度はぜひごゆっくりなさってください」
「そのつもりだ」とユーリスは言うと、黒い愛馬・ソーラスに乗った。
そして「占術の結果は、急ぎ伝令を送る」と言いながら、すでにユーリスは馬を走らせていた。

「お願いいたします」と言った女帝・ヴィヴィアーヌと、隣にいた夫のアントーノフは、頭を下げて、ユーリスと護衛の後姿を見送った。

< 122 / 318 >

この作品をシェア

pagetop