フォーチュン
翌朝、目を覚ましたアンジェリークは、朝食を摂り終えると、ディオドラとともに馬車に乗り、レアルタ王国へ向けて出発をした。

「山道を通ってレアルタまで行こう。普通のルートより少しばかり険しいけど、そのほうが他国を通らずに済むし、馬車でも行けるしね」

それは、身分証を持っていないアンジェリークにとっては、ありがたい提案だった。

「ありがとう、ディオドラさん」
「いいって。ただし山道は広い。何てったって、グリアの国土半分を占めてるからね。だから一日じゃあ、レアルタへは到着できないよ。もちろん、普通の道を通ってもだけど」
「そうですよね」
「今夜は山のどこかで野宿をすることになる」
「はい」
「食料と寝袋。最低限の準備はしてきてるから」
「本当にありがとうございます。ディオドラさんに出会わなかったら、私は・・・」
「礼はプリウスに着いてからでいいよ。私だって旅のお供ができて心強いって言ったでしょ?」

茶色の髪をアンジェリークと同じように後ろでひとつに結い上げているディオドラは、アンジェリークの母親ほどの年齢で、ふくよかな体をしている。
ディオドラは、自分の娘のようにアンジェリークを気遣い、朗らかな声で話しかけていた。
そのおかげか、アンジェリークがディオドラを心から信頼するのに、さほど時間はかからなかった。
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