フォーチュン
ⅩⅧ
多少の揺れはあるものの、馬車は軽快に山道を駆け進む。

「こういう時期っていうのもあるけどさ、晴天続きでよかったよ。じゃなけりゃ、今こうして山道を通るって選択肢はなかったからね」
「ええ、本当に」

ディオドラさんの言うとおりだ。
そして、ディオドラさんが私をプリウス市国まで連れて行ってくれなければ、いくら晴天続きでも、普通の道を歩いて行くしか、私には選択肢がなかった。
お天気にも恵まれ、人のご縁にも恵まれている私は、何て運が良いんでしょう。
馬車で行くほうが、徒歩より断然早くプリウスまでたどり着くことができる。
それに今は、荷台に隠れる必要もない。
今の私には、これらがどれほどありがたいことか・・・。

アンジェリークは、隣に座って手綱を握るディオドラに微笑みかけると、「あなたのお力添えに感謝します」と言った。

< 173 / 318 >

この作品をシェア

pagetop