フォーチュン
翌朝、宿を出たアンジェリークとディオドラは、30分ほどかけて北上し、プリウス市国へ入った。
プリウス市国は、レアルタ王国の領土内にある8つの区域の中のひとつで、プリウスだけはバラザーニ司祭長が統治している、小さな宗教都市だ。

プリウス市国へ入国するには、地理上、レアルタ王国を必ず通らなければならないこと、そしてプリウスは、レアルタ王国の一部とみなされているため、出入国門では身分証の提示をする必要はない。
その代わり、レアルタ出入国の検閲は、他国に比べて厳しく行われる。
不法に流れ着く民を、なるべく受け入れないためだ。

宗教都市であるプリウスでは、様々な理由で身分証を持たない者や失った者に対して、深く追求をせずに身分証を発行しているのは、「民は皆平等だ」という考えが根底にある。
だからプリウスに来た者には、新たに人生をやり直すチャンスを与えるべし、という教えを実行しているのだ。
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