フォーチュン
それでも、王族の殿方に抱かれたいからと、側室入りを願うレディは、後をたたない。
特に、ユーリス王子を悦ばせたい、というより、ユーリス王子に好きに弄ばれたいと思うレディがどれほど多いか。
ユーリス本人は、実のところうんざりしているのだが。

「いらっしゃいませ、ユーリス様」
「お久しぶりでございます」

横一列にずらっと並んだ側室の女性たちを、ユーリスはゆっくり歩きながら吟味する。
媚を売る笑顔を貼りつけ、体のラインを強調するドレスを着た側室の女性たちは、ユーリスと目が合った、と思うや否や、自分を売り込むようにユーリスへ話しかける。

そこに、ユーリスの足が止まった。

・・・赤毛か。
かすかに波打った豊かなところは、アンと似ている。
これもマダム・ナタリアの差し金、いや、心遣いか。

ユーリスはフッと微笑むと、その女性の手を取った。
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