フォーチュン
真夜中過ぎ、ようやく全客室の掃除を終えたアンジェリークは、くたくたに疲れた体で歩きながら、あてがわれている狭い自室へやっと入ることができた。
少なくとも個室があることに、アンジェリークはホッと安堵する。
その狭い空間だけは、自分の自由があると思えるからだ。

アンジェリークはカーテンを閉めようと、小さな窓へ歩み寄った。
夏至からひと月以上経った今の季節は、日が落ちるのが日々早くなっている上、気温も少しずつ下がってきている。

今はまだ、涼しいと思えるから良いけれど、このまま何ヶ月もこんな生活を、私は強いられるのかしら。

「コンラッド。私・・・私は、ここにいます」

真っ黒な空にポツンと灯る満月と、点在しているたくさんの星を仰ぎ見るアンジェリークのグリーンの瞳からは、とめどなく涙が溢れ出ていた。

「コンラッド・・・助けて・・・私を助けて、コンラッド」

そんなアンジェリークの祈りが通じたのか。
アンジェリークがマダム・ルッソの娼館へ来て2週間経った頃、事態が動き出した。
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