フォーチュン
この日もユーリスは、いつものように夜遅くまで執務をこなした。
日付が変わった時刻にようやく床に入ったユーリスは、数時間後、不意に目を覚ました。

・・・気配を感じる。

世界で一番繁栄している国の王子であり、次期にその国の頂点に立つユーリスには、味方が大勢いるが、その分敵も多数いる。
その立場を自覚させられるべく、ユーリスは幼少の頃から、常に6つの感覚を鋭敏にしておくこと、自分で敵を倒す力をつけることを徹底して教えられていた。

・・・どれくらい眠っていたのか。
この気配は人ではないし、敵でもなさそうだが。

ユーリスは逞しい上体をガバッと起こすと、音の元へツカツカと歩いた。
そして、ユーリスの瞳と同じ、青灰色をした重厚なカーテンを勢い良く開けると、空はまだ暗かった。
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