フォーチュン
それから数時間経った現在、アンジェリークにはまだ客の指名は受けていなかった。
恐ろしさにただ身を竦ませ、自分に腕を回して抱きしめながら、ガタガタと震えていた。

母様、父様。コンラッド・・・助けて!

アンジェリークがただそれだけをひたすら願っていたそのとき、娼館のドアがバンと開かれた。
いつになく大きく音が響いたが、それもそのはず。
ユーリスが力任せに足で蹴ったからだ。

「何事だい!?あらいらっしゃいま・・・え?貴方様はもしや・・・」

慌てて出てきたマダム・ルッソは、ドラークの王族と王宮に仕える者のみが着ることを許されている黒い正装姿を目の当たりにして、そのまま立ち止まった。
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