フォーチュン
「キャリッジを呼んだほうが良いのでは」というロキの意見は、待つ時間が惜しいというユーリスの気持ちにより、却下されていた。
昼過ぎにマダム・ルッソの娼館を出発したとき、空はまだ明るかったが、夕方になった今は、いつもより空が暗い上、時折稲光が見える。
ついに遠くから雷鳴が轟いたとき、アンジェリークはビクッと体をこわばらせ、目を覚ました。

「きゃっ」
「雷が鳴っただけだ。案ずるな。だが大雨が降る前に王宮へ着いていたい。少し飛ばすぞ」とユーリスは言うと、
黒い愛馬・ソーラスの腹を軽く蹴った。

ソーラスは軽くいななくと、ユーリスの意に応えるように、スピードを上げて走り始めた。
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