フォーチュン
「・・・よく無事で。良かった。本当に良かった・・・」
「母、様・・・」

アンジェリークは、母・ヴィヴィアーヌのドレスの袖をそっとつかむと、同じく涙を流して再会を喜んだ。
束の間、母として喜びの涙を流したヴィヴィアーヌは、そっとアンジェリークから離れると、絹のハンカチで涙を拭って、女帝の顔に戻った。

「ユーリス王子、改めて御礼を申し上げます。アンジェリークを見つけてくださって、どうもありがとう」
「礼には及ばん。俺たちは家族になるのだ。堅苦しいやりとりをする必要はない」
「え?じゃ、母様たちはご存知で・・・」
「そうでしたね。アンジェリーク。あなたはユーリス王子と結婚をする意志がありますか?」

二人一緒の姿を見て、すでに分かっていたことだが、女帝というより母親として、娘の意志を聞いておきたかった。

アンジェリークは、答える前に、姉・アナスタシア皇女のほうをチラッと見る。
するとアナスタシアは、「大丈夫」という代わりに、コクンとうなずいた。

「あの・・・もし許されるのであれば、私はユーリス王子と結婚をしたいと思っています」
「許さない者などいないはずだが」

低く轟く声が、アンジェリークのすぐ後ろから聞こえてきた。

「ユーリス。周囲を脅さなくとも、私たちは二人の婚姻に賛成している」
「脅してなどいませんが・・・ありがとうございます」
「私たちも賛成ですよ」とヴィヴィアーヌが言ったのを皮切りに、ユーリスとアンジェリークは彼らの輪の中に入り、ともに談笑を始めた。
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