フォーチュン
初めて訪れた土地で、自国のことを知っている人にお目にかかれた。
しかもその人はコンラッドだということが、とても嬉しい。

「そのレモネードでも大丈夫か?飲めるか?」
「ええ、大丈夫です。レモンと蜂蜜の味がしっかりと効いていて、とても美味しいですわ」
「そうか」

両手でそっとグラスを持つアンの仕草が、とても上品に見える。
どうしてもアンが正真正銘のレディだと思えるのは、俺の願望か?
とにかく、アンがバルドーの者であるということが分かった。

すみれ色の瞳に、明るい茶の髪。
外見や雰囲気は、しっかり俺の頭の中にインプットしている。
後は何とかなるだろう。

そんなユーリスの密かな「考え」など露とも知らないアンジェリークは、無邪気な顔でレモネードを飲んでいた。
< 32 / 318 >

この作品をシェア

pagetop