フォーチュン
「・・・ここか」
「はい。コンラッド、今日は楽しいひとときと思い出をくださって、どうもありがとう」
「アン」

気づけばユーリスは、またアンジェリークの唇にキスをしていた。
ゆっくり、そしてじっくりと唇で味わうと、名残惜しく唇を、そしてお互いの身を離した。
そのままユーリスは、親指の腹でアンジェリークの唇をそっとなぞると、アンジェリークの唇が、体が、吐息がかすかに震える。
それを見たユーリスは、穏やかに、且つ満足気な微笑みを顔に浮かべた。

「また会おう」
「・・・いつか、また・・・」

あなたに会えるときが来ますか?

切なくて泣きそうになってしまったアンジェリークは、「さようなら、コンラッド」と涙声で言うと、宿泊しているホテルへ足早に入っていった。
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