フォーチュン
その華奢な後姿が見えなくなるまで、ユーリスはその場に佇んでいた。

「・・・ユーリス。俺の本当の名はユーリスだ。次からは俺をユーリスと呼べ」
「次、あるんですか」

物陰に潜んでいた護衛長のコンラッドが、いつの間にかユーリスの斜め後ろ控え立っていた。

「当然だ」

愚者の言うとおり、運命の輪が廻り始めたとしたら、王子の「出会い」はドラーク王国の未来に関わる一大事。
どうかこのお二人に、そしてドラーク王国に、明るい未来が待ち受けておらんことを。

1人の女性に魂を奪われたユーリス王子の端整な横顔を見た護衛長・コンラッドは、そう憂わずにはいられなかった。

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