フォーチュン
「止めんか、ユーリス!」

この場を止めることができるのは、ユーリス以上に威厳と力を持っている、父のマクシミリアン国王しかいない。
ユーリス同様、凄みのある低い声音でビシッと諌められたユーリスは、ハッと我に返ると、「すまない」と愚者に謝った。

「ユーリス様、ワタクシのことはお気になさらず」
「愚者よ、この婚姻話は進めぬほうが良いと言うのか?」
「ワタクシには分かりませぬ。しかし、運命の輪はすでに廻り始めていることは確かでございます」
「そうか・・・バーンスタイン」
「はっ」

官吏の一人であるバーンスタインは、サッと一歩前へ出ると、マクシミリアン国王に頭を下げた。

「今日から3日後にユーリスがバルドー国へ出向くと、あちらへ伝令を送っておけ」
「かしこまりました、国王様」
「“非公式に”とつけ加えておくように」
「はっ!」と歯切れよく返事をしたバーンスタインは、一度深く頭を下げると、静かに部屋を出た。

「ユーリス」
「はい、父上」
「というわけだ。おまえが実際その目で見て、真実を見極めて来るが良い。どういう結果になるかは私も分からぬ。よってドラーク王国の次期国王であるおまえに結果の処遇は任せるが・・・この一件で世界の秩序と調和が乱れぬよう、くれぐれも穏便に事を済ませ」
「分かりました」
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