フォーチュン
「・・・え。結婚、ですか」
「ええ、そうよ。アンジェリーク。あなたは結婚をするのです。相手はラクロワ王国のウィリアム王子。ここ、バルドーより少しばかり規模の大きな国へ嫁ぐのです」
「でもっ!」
「あなたはもう20歳になりました。立派な成人です。嫁ぐ支障はありません。幸いウィリアム王子もあなたのことを気に入っておいでです。きっと幸せにしてくれるでしょう」
「お母様!」
「アンや。この婚姻話は、もう3ヶ月も前から進められていたんじゃ」
「・・・そんな・・・」

父様も母様も、そんなそぶりを全然見せなかった・・・ああ、それはきっと、姉様(アナ)がまだお相手を見つけていなかったから・・・。
というより、もしかしたら、アナがウィリアム王子の相手だったのかもしれない。
でもアナは、大国ドラークの次期国王であるユーリス様に見初められた。
ラクロワとドラーク、二国を秤にかければ、ドラーク王国を取るのが当たり前よね。

アンジェリークはうなだれることで、自分の立場を自覚しつつあった。
自分の周囲が少しずつ「絶望」に覆われていくことに対して、なす術が見つからない。
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