フォーチュン
「ありがとう」と礼を言ったユーリスは、ゴクゴクをそれを飲んだ。

「・・・確かにこれはアンが言ったとおり、レモンを香りづけ程度に入れた水だな。しかしこれも美味い」
「は・・・今アン、と・・・」というヴィヴィアーヌのつぶやきは、あまりにか細かったからか、ユーリスには聞こえていなかった。

代わりに、ずっとユーリスの頭の中を占めていることを口にする。

「アナスタシア皇女に会わせていただきたい」

来た!

ヴィヴィアーヌとアントーノフは、元々伸ばしていた背筋を、気持ちもう少し伸ばし、居住まいを正した。

「承知しました、ユーリス王子。すぐにアナスタシアをつれて参ります」
「いや、できれば皇女の部屋へ案内してほしい」
「あ・・・あ、それはー」と言いよどむアントーノフを、ユーリスはチラリと一瞥した。
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