アイ・ラブ・ユーの先で
ああ、本当に、あんまりだ。
そういう言い方をするくらいなら、おまえのことは好きじゃない、迷惑だ、消えろ、失せろ、ってきっぱり言ってくれたほうが、ぜんぜんマシなのに。
「いやです。やめられません」
「一度しか言わないって、言っただろうが」
視界を自分の流す水分に奪われて、見るものすべてがぼやけきっている。
おかげで、先輩がいまどんな顔をしているのかも、ぜんぜんわからない。
「じゃあ、どうしてたくさん、優しくしてくれたんですか」
そっちがそう言うなら、今度はわたしの番だ。
「わたしはそんなに放っておけない、情けない、ださいやつでしたか。なんとも思ってない子をバイクのうしろに乗せちゃダメって、先輩は、教習所で習わなかったんですか」
「習ったに決まってんだろ」
「え……」
一刻も早く泣きやみたい。
先輩の顔を、ちゃんと見たい。
手のひらでゴシゴシ涙をぬぐおうとするのに、あとからあとからあふれてくるから、まったく追いつかない。
「一度しか言わないから、よく聞け」
すぐ近くで声がした。
それを知覚したとたん、足から力が抜け落ちて、立っていられなくなってしまった。
とうとう地面に膝をついたわたしは、いつのまにか、とても強く、とても優しい、先輩の腕のなかにいた。