漂う嫌悪、彷徨う感情。
「何て言うか・・・律儀だね、美紗ちゃんって。 話半分でなんか聞かないよ。 100%で聞く。 大丈夫。 後で真琴からも100%で聞くから。 どっちの話も真剣に聞く」
日下さんが、ペットボトルを握りしめながら俯くワタシの頭を撫でた。
『100%で聞く』と言ってくれた日下さんの誠意に応えたいと思った。
目を閉じ、思い返す事さえ避けていたあの頃の記憶を呼び起こす。
小さく息を吸い、言葉を吐く。
「・・・真琴ちゃんとワタシは、中学の同級生です。 ・・・ワタシは中学の時、真琴ちゃんにいじめを受けていたんです。 何が原因だったのか分かりません。 ワタシが何かしてしまったのだと思います。 何がいけなかったのか気付きもしない鈍感さも、嫌われる原因だったのかもしれません」
少しずつ蘇る、思い出とは到底呼べない記憶。
ペットボトルを持つ手が震え、中に入っていた水が『チャプチャプ』と音を立てながら波を打った。