漂う嫌悪、彷徨う感情。

「・・・中学時代の真琴ちゃんは、いつも女子の真ん中にいて、先頭に立っていました。 反対にワタシは、目立つ事もなく自分の席でひたすら読書をしている様な人間でした。 本が好きだったんです」

どこから話せば良いのか分からない。 核心部を話すのも怖い。 当たり障りのない話を紡ぐ。

「真琴と美紗ちゃんが同じグループに属する事はあり得ないよね。 だとしたら、分かんないかもね。 いじめられた原因」

日下さんは、眉間に皺を寄せながら宣言通りに真剣にワタシの話を聞いてくれる。

話さなきゃ。 ちゃんと話さなきゃ。

分かっているけれど、喋ろうとすると喉の奥が締まる。

「兆候が分からなかった。 突然いじめが始まりました。 ワタシと違って人気者だった真琴ちゃんの言葉に、真琴ちゃんのグループの子たちも、そうじゃない子たちも賛同しました。 いつのまにか、クラスの女子対ワタシになっていました・・・」

記憶と一緒に涙が溢れ出る。 せめて呼吸が乱れない様に、必死で平静を保とうと気を張る。

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