青涙
5blue
言いずらい…。

言いずらいけど…ちゃんと言わなければ…。

「あのっ…さ…」

少し前を歩いていた変人がこっちを見る。

視線が交わりそうになって私は目を逸らす。

「さっき…抱き締めたのはさ…。嬉しさのあまりに意識せずにやってたっていうか…。あっ、私…あんたの誕生日プレゼント用意してなかったから…そのお返しに…って…。用意しなかったのはお金がないからとか…渡したくなかった…とかじゃなくて…私が渡すのは変かなぁ…って思って…」

反応が見たくて、変人の方を一瞬チラッと見る。


めちゃくちゃこっち見てるよ…。

「ごめんさい…嫌だったよね?」

「嫌じゃない……」

えっ……?


「嬉しかった…」

見てしまった…。

よりにもよって…変人の笑顔を…。


好き……。

好き……。

好き……。

今すぐ言いたい。

でも…


言ってはいけないんだ…。

「お姉ちゃんには…言わないでよ…」

「何で?」

「言わないで…欲しいから…」

「何で?」

「言・わ・な・い・で欲しいの!!」

「言いたいよ…」

「何で…言いたいわけ?」

「嬉しいから…」


「あんたにとっては嬉しくても…」

お姉ちゃんにとっては嬉しくないの!!

「お願い…。
言わないで…」

「何…」

「お願いだから!! うっ…」

いくら妹でも…



自分の彼氏を抱き締められて…



嬉しいなんて…思うわけない。

だから…。

ギュッ。



……へっ?
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