偽王子と嘘少女


「じゃあ、一口食べる? おごってもらうだけじゃ悪いし…」


そう言って、食べかけのいか焼きを渡す。


「い、いや…お、お俺は…だ、大丈夫っ!」


「なんで? …あ、そっか。私の食べかけなんて、食べたくないよね…」


面白い藤堂くんの反応が見たくて、少し意地悪してみる。


「ち、ちが…! その、かか、か、間接キスになっちゃ………あ」


その時、藤堂くんの目線は私からある女の子へと向けられる。


すると、その女の子も藤堂くんの視線に気づいたようで、こっちへ駆け寄ってきた。


「久しぶり、忍くん」


黒い浴衣でお団子頭。


背が小さめの可愛らしい少女。


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