空にとけた夜の行方。

身を隠す場所を窺っていた私は、彼女の言葉に驚いていた。


すごい、と、素直に思った。きっと私なら、あんなことは言えない。最初に断られた時点で、諦めてしまう。──ううん、告白だって、きっと出来ない。だから私は、今だってただの幼馴染なわけで。


そう、一抹の自己嫌悪と共に、感心していた時だった。



「……俺、好きな人いるよ」



「……え……?」


声を出したのは、教室の中の彼女だったのか、私だったのかわからない。


舜くんの声は、とても落ち着いていた。照れも、隠しも含んでいない、まっすぐな言葉だった。嘘であるとは思えなくて、だからこそ、発せられた内容が信じられない。


「好きな人、いるから、だから君とは付き合えない」


だめ押しのように、言葉が続く。


「……誰か、聞いてもいい?」


「知らないと思うよ。この学校の人じゃないから」


そうして、更に聞こえてきた言葉は、また私の心を乱す。



──時間が、止まったかもしれない、と思った。


他校の人、なんて、私だって知らない。いつの間にか、そんな人が、出来ていたなんて。


全身の血が逆流したみたいに、感覚が遠くなる。音が、光が、全ての刺激が無になったような気さえ、する。


舜くんに好きな人が、いる。


「……そう、なんだ」


呆然としたような彼女の声は、まるで私のものみたいだった。


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