空にとけた夜の行方。
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思い出して、私はまた溜め息をついた。
ソファに寝転んで見上げる天井が、ぼやけて霞んで見える。遠い幼い日、迷子になって泣きながら帰った記憶のようだった。
きっと、同じだ。こんなに大きくもなって、私は迷子になっているんだ。ずっと道標にしていた舜くんが遠くに行ってしまって、どこへ行けば良いのかわからなくて、迷っているんだ。
「……」
私は、身を起こして立ち上がる。そして、特に深い考えがあったわけでもないけれど、窓を開けてベランダへと出た。
広がる夜の世界に、少し怯む。いろんな色の絵の具をぐちゃぐちゃにかき混ぜたみたいな空が、ビルの隙間にちょっぽり見えている。その端っこに、引きちぎられたみたいな形の月が張り付いていて、それがなんだかそぐわなくて、不思議な光景だった。
見る人によっては、綺麗に見えるのかもしれない。けれど私にはとても、ぐちゃぐちゃしていて汚く見えた。
太陽がなくて、地上や空気中の色んな汚いものが隠されて、それでもちょっとずつ滲み出して、夜空に溶けだしている。それをちぎれた月が中途半端に照らしている。
或いは、そう思ってしまう私が、見えている空のように汚いのかもしれないけれど。