キミと私の好きなヒト
驚いた実加は大きな瞳を見開く。
だけど、と言葉を口にするキミに向かって静かに首を横に振った。
ねぇ、実加。
私もキミと変わらない、同じなんだよ。
私もあの人が好きで、でも双子の片割れも好きで。
キミのことを嫌いになれるはずがなかった。
「実加なら、いいの」
私の半分。
私のたったひとりの、特別な姉。
キミになら、私の初めての恋、奪われたって構わない。
「だって私、三木くんのことより、実加の方が好きだから」
教室の前で繋いでからそのままの手に力をこめる。
誰よりも手に馴染む、幼い頃から重ねてきた実加の指先が応えるように握り返す。
実加は私のコンプレックス、実加は私の憧れのすべて。
ひとつの恋で遠ざかって、すれ違って、それでもなんだかんだで私たちは双子だから。
キミは唯一無二だから。
「行って、実加。三木くんと話をして」
この手を離して、背中を押すよ。
かたく絡まった手をほどく。
じんじんと痺れるようで、赤く色づいたそれを言葉どおりに背にそえた。
くしゃりと顔を歪めて、実加は泣きそうな表情で、その衝動を必死にこらえる。
そして力強く、安心させてくれるぬくもりのある言葉を紡ぐ。
「わたしもね、徹より理加のことが好きだからね! うそじゃないからね!」
「うん」